連載第一回



 めっきり夏ですね。
 夏といえば思い出すのはやはり、夏の野外イベントでしょうか。かれこれ……魔女卵がソニーからCDが出た年……うーん、レベッカのデビューアルバムと同時だったので、20年以上前の夏でありました。
 当時、ヤンタ鹿鳴館という西九条のライブハウスを始めた山根のおっちゃんに、色々相談されたりしてまして、その年、小豆島の寒霞渓でオリーブ祭りの一環で野外イベントを引き受けたとのこと。
 ただし、バンドが少ないので協力して欲しいとかで、元々野外イベントの解放感が好きで、まして、夜ともなれば……と、想像は天地を駆け巡り……いえ、お祭り騒ぎって大好きなんですよ。
 で、OKを出して、魔女卵・プレゼンス・クライスト・プリマドンナ・アイボリーゲイト(東京)を引き連れまして親分関西汽船で小豆島へ……当時若手バンドとしては、全国展開していましたし、まあ、そこそこメジャーバンドばかりでありました。
 関西汽船の方も気を使ってくれて、うちの5バンドにはベッドを用意してくれたり、機材車を余分に積んでくれたり、色々気を使ってくれました。
船上ライヴもあり、プリマドンナとクライストが、半分吐きながらライヴを盛り上げ(暑かったのです) ドラムの音が少し変わったり(暑くて塗装が融けかけたり)ギターの音が聞こえなかったり(風向きで時々聞こえました)灼熱のライヴを繰り広げましたっけ。

プリマドンナ船上ライヴ クライスト船上ライヴ
演奏者以外は皆元気だ! 一般客に交じってサウンドチェック!

 とは言え、海上を行けばいつかは陸に着くもの、熱射病になりかけながらも、寒霞渓の会場(5バンドの機材車は続く)休む間も無くついてすぐリハーサル開始。
 時間がなかったけど、(山根さんちの6バンドはリハーサルもなかったみたいで、気の毒だったけど)取りあえず、音合わせだけは大事だから強引にねじ込まさせていただきました。
 PAや機材リストは、事前に貰っていましたので、短時間の音合わせでOK、OK、暑いもんね。
 で、ステージも組みながらのリハーサルだったのだけど、ハタと藤田は気がついた。
 あれ、照明は、いつ、つけるのだろう> 照明プランを出しつつ、PAの側に移動した。
藤田「えー、今日のうちのバンドの照明プランですが、照明のオペの方はどちらに?」
イベント責任者「え?」
藤「照明の卓はこちらじゃないのですか?}
イ「ハぁ? 何ですか?」
藤「ステージの照明の取り付け、押してるんですか?」
イ「あ〜、ついてます」
藤「え?」
(あれはどう見ても裸電球だ。蛍光灯ですらない)
 うーん、この人は知らないんだ。どんなものかは。
「責任者の方ですよね? 照明を絞ったり、つけたり消したりって言うのは何処でやるんですか?」
イ「ああ、これです」
藤田「え?! これって、コンセントですよね……は?」
イ「ええ、これで、つけたり、消したりできるんですよ」
藤「嘘でしょう?」( ̄∇ ̄;
イ「いえいえ、このスイッチで、全部の電球が消えるんですよ」(大真面目)
藤「………。」 (;° ロ°)(汗)
 10秒程経って、冗談ではないことを理解した藤田は暑さで怒る気力もなく、関係者に集まってもらって、対策をひねくりだした。セロファンを用意してもらって、赤と青の電球を作ってもらうように頼み、数も増やしてもらい、スイッチを押して、つけたり消したりをお願いし、花火大会も予定の中にあったので、急きょ20発ほどを演奏中に上げてもらうことにし、全然、縁の無さそうな大将に、「私が片手を上げたら一発、両手を上げたら二発、お願いします」とかお願いして、取りあえずしのごうとした。
休む間も無くステージが始まり、日も暮れ、いよいよ私のバンド達の出番になった。
日暮れの照明は、奇麗だ。だ。だのだ。が、妙に変だ。かなり変だ。お願いした通り、セロファンで裸電球は隠されている、が、が。すごく真面目に取り組んでくれたとみえ、「赤」「青」と順序良く、交互に並んでいる。おかしい。すごくおかしい。縁日の金魚すくいのようだ。笑いの止まらなくなった藤田は、開き直った。
 金魚のどこが悪い?ヽ( ´ー`)ノ
 こうなったら花火に期待する。片手を上げる、5〜6秒ほど経って夜空に大きな花が広がる。タイミングが悪すぎる。何だか間抜けだ。
あっ、このバンドのエンディング両手だ。勢い良く両手をあげる。
 ギターのストラップを外したころ、爆音と一緒に大輪の花火があがる。たすけてぇ〜〜。
 私の叫びは闇に消えていく。懲りずに何度も両手を振り回す。ガキンちょが、私の横で「バンジャイ」と飛び跳ねる。きれいじゃないか。花火っていいなあ。
 夜空を見上げ続け、時々、やけくそのように手を振り続ける私の側を浴衣を着た子供たちが走り回り、蚊が素足の指から血を吸い取っていく。
「おぉい、子供たち〜。今日はお祭りだ。花火はきれいだし金魚すくいもあるゾ〜」と声をかける藤田に子供たちはニコッと笑いかける。
こうして真夏の夜は更けていった。ライヴ終了後、協同組合の責任者の方が、「いやぁ、こういうロックってのは初めてですが、ええもんですなぁ」とおっしゃって下さったので、
「私も始めてです、こういうのは………」と答えたものの、全てに真面目に取り組んで下さってたので、ある種感動してしまいました。


《続》