「松原啓之 WITH R&R」

WITH




松原君は、私が覚えてる限り、スパイラルというHRバンドのVo.をやっていた。
その頃から器用で、EARTHSHAKERのマーシーの真似なんか、上手いもので、MCのちょっと訛りのコピーなんか、似すぎていてよく笑わせてくれた。
スパイラルが解散して、次にバハマに現れたのはWITHというバンド名。
メンバーは、元アンジェラスの関家君、魔女卵に居たDrのちっち君、Gは元スパイラルの古川君だ。
もともと、私の知っているメンバーだし、ノリ重視のバンドで、何の問題もなくZEROISM(GARGOYLE、Eins:Vier、ValentainD.C.、さくLaさく、WITHの5バンド)の中に入ってもらった。ZEROISMというのはKIBA発案のそれぞれのジャンルでNo.1を目指す、精鋭部隊の集団だ。そのサポートをするのが、アフターゼロ、この5バンドが集まってイベントをすれば1000人は集められたのだから、無敵集団だったのかもしれない。
で、WITHの話に戻るが、メロディアスなアメリカンハードで、ノリの良い楽曲が多いので、只でさえ聞いている者は、ハイになる。そこへもってきて松原君のパフォーマンスと「つぼ」を掴むMC、客をのせるのが上手い。
当然、会場が和やかにフレンドリーに、仲良く踊ってくれるのだ。
バンドによっては聞かせるバンドも居る。頭を振り乱すバンドも居る。
WITHは、楽しむバンドだったのだ。
川崎のクラブチッタというところで、メジャーから出したオムニバスCD「 ZEROISM 西方見聞録」のプロモーションイベントを制作したことがあるが、某メーカーの某氏いわく、「いや〜、WITHってバンド、一瞬で客のせましたねぇ、凄いですよ〜! うちの、バンドコンテストに出てくれませんかねぇ」
T.F.「いいですよ?何か条件を呑んでいただけたら……」
某氏「いや、もう、優勝して、デビューってのは、だいたい決まってまして……でも、コンテストでも、会場をのせてくれるバンドが、出てくれたら、雰囲気良くなりますよねぇ」
T.F.「優勝は決まってるのなら、準とか、入賞とか賞金は出るんですか?」
某氏「いや、それは……無いんですけど、参加料とかは免除ということでは?」
T.F.「えっと、良く解らないのですが、それは、『サクラ』になって欲しいというような意味ですか?」
某氏「いや、まあ、花が欲しいって思ってますので」
T.F.「……。じゃ、花代下さい。芸者にはつきものですから」
某氏「……そりゃそうですね……つきものですよね……」
T.F.「ハラキリってのもありですよネ。(ニコッ)
某氏「ハラキリですよね。 ええー……ありですよね」
T.F.「(ニコッ)問題は、誰の腹なのかってことだけですよね。私はバンドが可愛いし、(ニコッ)私も自分はかわいいのですよ。(ニコッ)とすれば、切腹はこちら側じゃないですよネ」
某氏「う〜〜〜〜〜ん、う〜〜〜〜〜ん」
T.F.「あっ、もう切っちゃったんですか? 念のため介錯してあげましょうか?」
某氏「あっ、いえ、帰って考えてみます」
T.F.「いいですよ。医者と相談して、切り場所考えていただいても……」

というような、良く解らない話もあったのだが、WITHはその頃、アマチュアでもチャージバックで10万単位のギャラは貰っていたのだがら、アゴ足ぐらい出してやって欲しいもんね……。
WITHは、関家君と古川君の、おつとめがあったので(いや、刑務所じゃないですよ)土日中心でないと動きにくかったのだ。それでも松原君は、人柄の良さと誰彼無く気を使うので、ZEROISMの個性派ぞろいのバンドの中を泳ぎ回り、セッションやイベントでも「和をもって尊しとなす」を貫いて、盛り上げてくれた。松原君が入っていれば何の問題もない。
……しかし、問題はWITHの中に起こってしまった。Drのちっち君が、他のバンドに引っこ抜かれたのだ。BとGは仕事もち。松っちゃん、ピーンチ! WITH、ド ロ ッ プ ア ウ ト ……。
松原君はその後、ロキシーというバンドを始める。
WITHは「何々と一緒に」と訳すれば、客と一緒のステージを見事貫いていたのだから、やり残すこともなかったのだろう。
ところで、松原WITH酒は、今も一緒だ。陽気で愉快な酒癖なので、誰にも迷惑をかけないから、問題ないのだが、何故か、私が居ると、酔ってないふりをする。目が泳いで、身体が揺れていても、酔ってないふりをしようとする。昔々、オールナイトイベントに出演後、外で、ファンの女の子達に酔っ払ってもたれかかっているのを、通りすがりに見た途端、一発、回し蹴りを入れ「ええかげんにしいや!」と怒ったのが、余程、マゾヒストの開眼をさせてしまったのか……それとも本当に痛かったのか、現在に至るまで、私とバハマを愛してくれている。
昨年は、色々、ピーンチの時には、飛んできて「何なりと」
(本当にこの台詞しか言わんのよ〜)といって、全力で支えようとしてくれる。
今は、キャットの講師をしているが、万年、熱いロックンローラー魂をもった奴なのですよ。


〜完〜